この本の良い点は、何といっても、1920年代・30年代の遊郭に生きる女性たちをリアリティのある記述で描いたところである。ただ単に犠牲者としてではなく、「生きる女性」としての娼妓を描いた迫力に引き込まれるのである。
遊郭で働く女性の前職は女中や家事手伝が多く、貧困層の女性であった。廃業することができても次の仕事がなければ、再び遊郭に戻らざるを得ない状況がある。そのため、廃娼運動の中には女性の自活手段を身につけさせることを目的にする活動があった点や娼妓の中には助産婦になるために学校に通う者や通信教育を受講する者がいたというエピソードは面白かった。
また本書は、迫力ある記述の面白さばかりではなく、「学術的発見」の価値も有している。これまでの研究では、廃娼運動の活動に焦点が合わせられてきた。それに対して本書では、「生きる女性」として遊郭で働く女性を描くことにより、遊郭から解放と同じく(借金がチャラになるわけではないため)「働く環境の改善」を求める活動が重要性を有していた点や時には運動家が「状況改善」よりも自由廃業を「選ばせた」点(1930年代初頭の恐慌の中では生き延びる労働が必要だった点)を浮き彫りにすることを可能にさせている。
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[新装版]遊廓のストライキ: 女性たちの二十世紀・序説 単行本 – 2015/5/10
山家 悠平
(著)
逃げる! 戻らない!―― それが「活用」されることを拒んだ彼女たちの選択だった。
関東大震災からの復興を経て、モダニズムの時代として評価されることが多い、1920~30年代。この時期に隆盛をきわめた労働争議と呼応するように、公娼制度下で「籠の鳥」と呼ばれた遊廓の女性たちが、自分の生と性を男社会から奪還するべく、立ち上がった――。青森、大阪、広島、佐賀、福岡など各地の史料をつぶさに読み込み、無名の女性たちの実像に肉薄する。近現代女性史の空白を埋める貴重な成果。
関東大震災からの復興を経て、モダニズムの時代として評価されることが多い、1920~30年代。この時期に隆盛をきわめた労働争議と呼応するように、公娼制度下で「籠の鳥」と呼ばれた遊廓の女性たちが、自分の生と性を男社会から奪還するべく、立ち上がった――。青森、大阪、広島、佐賀、福岡など各地の史料をつぶさに読み込み、無名の女性たちの実像に肉薄する。近現代女性史の空白を埋める貴重な成果。
- 本の長さ273ページ
- 言語日本語
- 出版社共和国
- 発売日2015/5/10
- 寸法15 x 1.7 x 18.8 cm
- ISBN-104907986165
- ISBN-13978-4907986162
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商品の説明
著者について
一九七六年、兵庫県に生まれる。現在は、大手前大学学習支援センターに勤務。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。専攻は、日本近代女性史。共著書に『労働のジェンダー化』(平凡社、二〇〇五)、翻訳に、レベッカ・ジェニソン「呉夏枝と琴仙姫の作品における『ポストメモリー』」(『残照の音――「アジア・政治・アート」の未来へ』所収、岩波書店、二〇〇九)がある。
登録情報
- 出版社 : 共和国 (2015/5/10)
- 発売日 : 2015/5/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 273ページ
- ISBN-10 : 4907986165
- ISBN-13 : 978-4907986162
- 寸法 : 15 x 1.7 x 18.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 411,499位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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